欲求段階(desire)の12スキームLPフレームワーク 概要 E-commerce service company

別項で公開したAFLARモデルと10の消費行動は 細分化構造 (AISDC3AES アイスドシースリーエース)に体系化致しましたが、
欲求段階(desire)におけるLPフレームワーク「欲求段階の12スキームLP」を弊社セクションラボチームより提唱します。
(2014年8月29日提唱)

従来、一部クライアントにお伝えしたものですが、このモデルは一定の汎用性持つため、
より多くのEC事業者、EC支援業者にご活用いただけるよう公開します。

欲求段階のLPフレームワーク
LPフレームワークのワイヤーフレーム

従来のフレームワークと異なる点は、販売者目的と手段および消費者挙動と感情変動をマトリクス化した点と、LP構造をJPOPの楽曲構成をベースにモデリングした点です。

そしてLPは消費者感情に訴求しやすいため①~⑦を右脳刺激、⑧~⑫を左脳刺激スキームとして分割しました。

つまりページにランディングしてから購買意欲を引き上げる構成としております。

しかし全ての環境に適用されるわけではなく、楽天とAmazonの商品訴求の違いのように適切な環境と、適切な商材に合わせる必要があります。

この例を挙げれば、Amazonは商品登録時の仕様によりLPレイアウト構成は不可能ですが、Amazonは衝動買いを狙うモデルではなく、基本的には目的買いを中心とした構造です。

一方、楽天に見られる縦長ページは、Amazonよりも商品登録時の自由度があり、ページにランディングしてから購買意欲を引き上げる構成で、際限なく情報を増やして※1、衝動買いを狙うモデルに近い構造になっています。 ※2

どちらかに優劣をつける事ではなく、 適切な場所・商材を吟味してLPフレームワークを活用頂けたら幸いです。

また、上述の通り私共が「欲求段階の12スキームLP」の体系化するにあたり参考にしたものは楽曲構成、いわゆるJPOPの音楽構成でした。

海外、特にアメリカやヨーロッパのサイトはシンプルなLPが多く、日本のLPは独自の進化を遂げたと感じますが、 これに近い独自性を帯びるのがJPOPの楽曲構成です。※3

私共は、多くの人に愛される楽曲であれば、それだけ多くの人が心地よいと感じる構成になると仮説し、JPOPの楽曲構成とLP構造には、日本人の消費行動ないし情報受信のあり方に相関性があると考えて体系化いたしました。

一般的な楽曲をざっくりと分解するとAメロ、Bメロ、サビ(便宜上Sと記載)に分かれます。
実際には3構造だけではありませんが、海外の楽曲構成のパターンはABABSと、サビを後半に配置するのに対し、JPOPの楽曲構成はSABSBSと、サビを冒頭に配置しリフレイン(同メロディーの繰り返し)を多用してサビの刷り込みを行う構成で、海外のそれと比べて異なります。

最も目立たせたい要素をサビと置き換え、次にAメロ、Bメロにあたる商品説明で少し落ち着かせ、再びサビに戻って訴求を重ねるとLPに緩急抑揚が発生しインパクトある商品訴求と早期の商品理解に至ります。

※右上LPフレームワークは最も独自性のあった90年代JPOPに多用されるSASBBSCABBSSの構成をモデリング。

総括的にこのモデル自体はさして目新しいものではありませんが、多様化した現在のEC市場環境における一定の普遍性を有するフレームワークと考えております。

しかしこのモデルが全ての商材、掲載場所に当てはまると思っておりません。

一例を挙げればコモディティ化した商品群にはあまり向いていない側面があり、このモデルは一定の条件下において、消費者との適切な接触が発生する場合に有効性があります。

後述に、各フェーズを解説していきます。

※1 数値根拠はありませんが楽天内の縦長ページは2003年頃から通信回線速度の成長と共に増加したように感じます。
※2 無論、楽天内で縦長ページを採用しない店舗もあります。
※3 90年代に主流となった小室哲哉楽曲、B’z、織田哲郎楽曲は、海外と比較して顕著な独自性があり独自の進化を遂げたと言われます。

引用・参考
買い物する脳―ニューロマーケティング(早川書房)
現代ポップス論考(扶桑社)
J-POP アレンジテクニック(ヤマハミュージックメディア)

①③⑥インパクトフック 12スキームLPフレームワーク E-commerce service company

LP構造で最も重要なポジションの一つです。
ユーザー感情を最も引き上げ、その向上遷移によってページ離脱するか否かに直結するスキームです。

欲求段階のLPフレームワーク
LPフレームワークのワイヤーフレーム

①のスキームゴールは注意喚起、③⑥は欲求向上。いずれも高揚感を煽るスキームです。

総論的になりますが生活必需品を除けば、人は何気ない生活の中で外部刺激を受けて商品が欲しくなります。だからこそ企業はこれだけ多くの広告を出し、様々な形で刺激を与え続けるわけですが、商品を買いたくなる起因は圧倒的に右脳への刺激です。

その点、このスキームは最も右脳を刺激する箇所であり、最重要箇所です。

特に①では直帰を低減させるためにキャッチコピーと、商品が効果的に表現されるイメージが問われます。手法として受賞歴や実績数と言った権威掲載の有効性があります。また、サンプル供給ができる商品はこの段階でその旨を記載する事で、お得感および購入へのハードルを下げる効果があります。

③⑥においては、以降のページ構成を見てもらえるよう欲求引き上げに注力する要素が問われます。具体的には食品で言えば①は商品全体が直感的にわかるイメージに対して、③⑥はその要素優先を下げて、奥行きや臨場感を感じるイメージを使用するのが良いと考えられます。

総じてこのスキームでは商品の訴求ポイントが凝縮されている事が望ましいといえます。
尚、3か所にこのスキーム配置を推奨しますが、そこで使用する画像、キャッチコピーは同一ではなく変化を持たせ、商品の違った側面を別のアングルで効果的にインパクトを与えます。

尚、①のファーストビューボトムラインを②のフィロソフィーまで下げることで、次の情報欲求を刺激します。この事でそこでの離脱率が6%前後低減する結果が出ております。

また、楽曲構成に置き換えるとサビの位置づけになります。
サビを複数回繰り返す事により早い段階でサビの刷り込みを行い、この商品を記憶させるインパクトを与える段階です。

②フィロソフィー/ビフォーアフター 12スキームLPフレームワーク E-commerce service company

インパクトフックに比べ、訴求圧を落とすスキームです。

欲求段階のLPフレームワーク
LPフレームワークのワイヤーフレーム

スキームゴールは興味喚起
一定の商品認知が成されている場合は商品のフィロソフィー(理念)を語り、認知が浅い場合は商品購入のビフォーアフターを簡潔に表現する事に有効性があります。相対的にインパクトフックを引き立たせるため高揚感を煽らず消費者の感情をフラットにするスキームです。

(参考:ECブランディング理論 C-VAIPASSの8指標

上述の通り、ここでは一定の商品認知がある場合と、そうでない場合に分けて記載します。

一定の商品認知がある場合は、インパクトフックに反応した訪問者を逃がさないために、商品の訴求のみならず店舗の姿勢、誠実さを伝えるためにフィロソフィーの表記を行います。また「○○のあなたへ」と言ったターゲット指定や、この商品のコンセプト、こだわりなど訴求圧を落として簡潔にまとめることで③のインパクトフックが相対的に引き立ちます。

商品認知が浅い場合は、フィロソフィーの表記は必要ですが、商品購入前と後のいわゆるビフォーアフターを簡潔に記載します。

「薬事法」に基づき効果・効能を謳えない場合もありますが、可能な場合は具体的な立証数値を記載して論理的に商品の優位性を伝えるスキームです。

いずれの場合も訴求圧を落とし、具体的にはホワイトスペースを多用する手法に有効性があります。また監修者等の人物掲載が可能な場合、この配置に掲載する事で離脱回避と共に次スキームへ遷移させる効果があります。

楽曲構成に置き換えるとAメロの位置づけになります。
サビと比較して音圧を落とし、音数を減らすことでサビを引き立たせる手法を取る場合が多く、この構成箇所では、サビで訴求したい内容の布石をAメロ歌詞に挿入する場合があります。

④差別化/⑤ストーリー 12スキームLPフレームワーク E-commerce service company

他社商品または、顕在化した別の何かとの差別化を行い、その商品の背景、開発ストーリーやバックボーンとなる店舗解説。
インパクトフックに比べ訴求圧を落とすスキームです。

欲求段階のLPフレームワーク
LPフレームワークのワイヤーフレーム

スキームゴールは感心、納得
既に①と③のインパクトフックを経由したこの箇所は、具体的なこの商品の優位性と商品開発の背景、商品製造の風景の説明に有効性があります。相対的にインパクトフックを引き立たせるために、②と同様に高揚感を煽らず消費者の感情をフラットにするスキームです。

④は他社商品または、顕在化した別の何かとの差別化を行うわけですが、差別化には大きく「商品・ブランド・サポート」の3つに絞られます。つまり商品スペックはもちろん、料金、同梱物、ブランドの安心感、配送リードタイム、アフターフォロー等々の優位性を概ね3点に絞り込み効果的に訴求します。5点以上掲載すると離脱が起きる場合があり、優位性の取捨選択は必要です。

⑤はその商品が開発された背景と、現状どのように製造されているか、という過去と現在の状況を表現する事に有効性があります。開発ストーリーは「なぜそれが必要だったか」を記載するため、興味を持った訪問者と最もシンクロし、納得・感心といった挙動遷移になります。開発者または店長などの人物を掲載する事も離脱回避になります。

同時にこのスキームは②のフィロソフィーにも通じますが店舗の姿勢、誠実さを訴求する効果があります。ここでは②ほどのホワイトスペースは不要ですが、読み物としてのスキームを意識する事を推奨します。

楽曲構成に置き換えるとBメロの位置づけになります。
ここでは転調を行う事が多く、曲の印象を変える事で全体を通じて深みのある印象を与えます。この構成箇所ではサビで訴求したい内容の背景を歌詞に挿入する場合があります。

(関連:競合サイト分析サービス

⑦シーン提案 12スキームLPフレームワーク E-commerce service company

訪問者に、商品購入後のシーンを想起させる構成。訪問者の右脳に働きかける最後のスキームです。
一定の高揚感を煽り、商品購入に直結するスキームです。

欲求段階のLPフレームワーク
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スキームゴールは購入後のシーン想像
既に3回のインパクトフックを経由したこの箇所は、訪問者に対し具体的な商品購入後のシーンを想起させます。「いつ・どこで・誰と」を基本として弊社提唱の『TOPFM(トップエフエム)モデル』に準じた提案型スキームです。

言い方を変えれば「提供できる価値は何なのか」を説明する非常に大事なスキームで、右脳を刺激する最後の箇所になります。

ここで重要なのは機能提案のみならず、用途の提案をすべき点です。
この点はTV通販番組の構成が参考になります。

例えば「ジャパネットたかた」の高田社長はデジタルカメラを紹介する際に、画素数の説明はするものの、それよりも赤ちゃんの写真や子供の運動会の写真を見せて
「こういう写真が撮れます」というイメージを与える事で売上が跳ね上がる、とインタビューに答えていましたが概念としては同一です。

シーン提案にはいくつかのパターンがあります。
訪問者が事前に想定していたシーン以外に「こんな活用例もある」といった計画購買を促進する顧客想定型提案と、「この商品と同時にこれを買うとこんなシーンになる」という非計画購買を促進する需要想起型提案が多く活用されます。いずれもこのスキームまで来た訪問者に購入後の想像を促し、感情指向を煽ります。

訴求圧はインパクトフックと同レベルを意識し、想像を促す側面から、画像メインで効果的なキャッチコピーを掲載し、訪問者とのシンクロが問われるスキームです。

楽曲構成に置き換えるとサビ後のCメロの位置づけになります。
この構成は複数回のサビ後に使用する事があり、サビの終わりからスムーズに展開遷移させることで、従来のサビの終わり方では無い事を知覚させてさらなる展開に高揚感を煽ります。よってリフレインしない構成箇所です。

⑧第三者評価/⑨お客様の声/⑩価格や製品特徴 12スキームLPフレームワーク E-commerce service company

論理的に商品の優位性を訴求し、左脳刺激開始する構成。
訴求圧を落とし根拠を説明するスキームです。

欲求段階のLPフレームワーク
LPフレームワークのワイヤーフレーム

スキームゴールは理解・確信・時期検討
⑦まで右脳を刺激し、これ以降は理性を司る左脳に働きかけるスキームになります。この箇所は、訪問者に対し購入判断の確信をさせる目的があり、そのために商品の客観的評価、そして既購入者の声を掲載し購入判断を促進させます。その後、価格やスペックの明記をスムーズに遷移させて、購入時期の検討を促します。

この段階の訪問者思考は、AFLARモデルと10の消費行動の検証段階(Logical)に近く、
言い方を変えれば「なぜこれを買うべきなのか、この店で買う必要があるのか」
考えさせるスキームです。

⑧の第三者評価やマスコミ実績の掲載は、訪問者に商品の客観的評価を訴求する事で、失敗しない購買アクションの回避根拠となり、安心感を与えます。

⑨のお客様の声は、多くのユーザーに支持されている商品であることを訴求することで、⑧同様に安心感訴求につなげます。尚、お客様の声は商品ターゲットと近い要素(年齢・性別・悩み・地域など)にすることで、親近感と安心感を与える事ができます。
購入根拠を求めるため、既出④の差別化が顕著な商品であれば、この段階で他社商品と比較をする事も有効です。

⑩の価格や製品特徴は⑦の機能提案のまとめと価格の記載です。
価格においてはTV通販のようにフィナーレで価格発表する手法と異なり、この段階が初見の価格発表ではありません。昨今のモール検索結果や、価格に優位性があれば広告テキストなどでの表記をフックに流入する場合も多いため、ここでは商品購入に至る金額と、それによって手にする製品・商材の機能的な情報を具体的にまとめるスキームです。

楽曲構成に置き換えると⑧はAメロ、⑨⑩はBメロの位置づけになります。

⑪限定訴求/12クロージング 12スキームLPフレームワーク E-commerce service company

論理的に商品の優位性を訴求し、左脳刺激開始する構成。
訴求圧を落とし根拠を説明するスキームです。

欲求段階のLPフレームワーク
LPフレームワークのワイヤーフレーム

スキームゴールは焦燥と購入
前スキームで購入時期検討をしている場合、⑪で必要なのは購入アクションに至る焦燥感の訴求です。具体的には期間限定、数量限定といった絞り込み、緊急性を明示し、言い方を変えれば「今買うべきなのか」を考えさせるスキームです。

つまり、前スキームで購入時期検討をした段階でこのスキームに遷移した場合のほとんどはここで購入判断に至ります。または、前スキームで購入への確信に至らずとも、当スキームの焦燥感で購入に至る場合もあります。

⑫は購入に至る最後のひと押しとなります。決済方法、商品到着リードタイムなど購入に至る必要情報を適切にディレクションし、カゴ落ち回避のために情報を整理します。ここで購入に至る何らかの障壁がある場合は、一定の購買意欲に至ったとしても離脱するため、十分な情報の整理、スムーズな導線が問われます。

この段階は、AFLARモデルと10の消費行動の行動段階(Action)と同一で、アップセル/クロスセルによる顧客単価向上手法と同時に、カート内挙動のUI/UXが問われる段階です。

楽曲構成に置き換えると当スキームは最後のサビの位置づけとなり、感情曲線のピークで終える事が多く見られます。

今回、JPOP楽曲をモデリングしてLPフレームワークをまとめましたが、誰にでも好きな音楽はあると思いますので、その曲がどういった構成で、どのようにECのページに落とし込めるかという作業をやってみるのもおもしろいと思います。好きな曲ならば、人はその構成も心地よいと感じるはずですし、多くの人に愛される曲であればそれだけ多くの人に訴える構成になるはずです。


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