画面を通じてモノを買う。そこに至る購買心理と欲求の分析。また販売者の技術研究。ネットショップの総合研究所。

感動の沸点を下げよう

当社のオフィスは、元は学習塾の建物でした。来客をお通しする会議室には、学習塾の時代に使われていた黒板や、小学校などにもあるタイプの児童用の机・椅子を残しています。一見IT系オフィスとは思えない、学習塾の雰囲気。初めて来社された方の中には、驚いたり感動したりする方もいらっしゃいました。

これは当社が意図的に仕組んだ演出ですが、改めて眺めてみると、オフィスというには違和感のある空間です。この建物に引っ越してきた時、あえて学習塾の備品を残す事でお客様を驚かせようと、社内で盛り上がった事を思い出しました。とはいえ、我々にとってはもはや日常の風景。今では特に感動はなく、むしろその演出の事自体を忘れてしまっている事さえあります。

 

慣れると忘れてしまう感情

これと同じ事が、店舗でも起こりがちです。お客様の為に創意工夫を凝らしたサービスや、他店にないユニークな商品。それらのポイントに感動するお客様もいるはずですが、お店のスタッフがそのポイントを忘れてしまっているのです。

「そんな事はない。うちのスタッフは商品を熟知して、長所の説明がスラスラと出来る」という方も多くいるかと思います。ただし、初めて商品に触れた時の感動を、いまでも持ち続けている人は、少ないのではないでしょうか。特にベテランスタッフは、商品やサービスに慣れてしまっている為、この様な事が起こりやすいと思います。

そうなると、そのスタッフが作る商品説明文が、どこかつまらなくなります。何度も使いまわされた文言、オシャレだけど上辺だけの表現、細かいスペックの説明が多くなってきます。説明文を作る事に慣れ、その制作スピードは上がっても、訴求力はUPしてないのです。

 

では、お店に慣れてしまったスタッフは、どうすれば訴求力の強い商品説明文を作れるでしょうか?

 

感動の沸点とは

私の秘訣は「感動の沸点を下げる」ことです。沸点とは、液体が沸騰しはじめるときの温度の事ですが、この「沸騰」を「感動」に読み替えて捉えてください。例えば、感受性が豊かな方、感情表現の豊かな方。小さな出来ごとに一喜一憂するような方を連想してみてください。子供でも良いです。

小売店の店先ですごい!カワイイ!を連発してる女子高生。あるいは、飲食店で美味しい!最高!を連発している中年男性。つい気になって、どんな商品を見てるんだろう、何を食べてるんだろう…と注目してしまいませんか?

クールな方から見ると、「そんな事で大喜びしてみっともない、大した事ないじゃないか」と思うかもしれません。しかし、感受性豊かな方の表現は、前述の通りあなどれません。冷静な分析に基づく商品詳細より、商品使用時の感情を伝えた方が、その良さが伝わる事が多々あるのです。

 

素人でも感動は伝えられる

例えば、近年の映画のCMが良い例です。試写会後の観客にインタビューをして、面白かった/感動して泣けました/最高にカッコ良かったです…といった感想を流すCMです。一般人のその場の感想ですから、皆さまから見ればその表現はあまりにも貧相に感じるでしょう。映画についての具体的情報が全く伝わってこない為、一部の映画ファンの方からは不評だと聞きました。実は私も、あの手のCMはあまり好きではありません(笑)
しかしながら、一般人の感想を流す映画CMは、いまだに良く目にします。おそらく、一定の効果があるからではないでしょうか。映画の内容は分からないけれども、何か面白そう・感動できそうだという事が、ダイレクトに伝わるのでしょう。特徴や見どころより、それによる観客の「感動」を伝えているからだと考えられます。これは前回お伝えした「ベネフィット」に近いものがありますね。

 

そしてこれらは、映画評論家のように豊かな知識がなくても、素人でも出来ます。店舗で言うと、ベテランでなくても、新人スタッフでも出来るのです。むしろ新人の方が、気付きや大きな感動があるかもしれません。

 

積極的に感動しよう

商品説明において、冷静な視点や詳細な説明は、もちろん大切です。ただし、慣れによって感動を失ってしまうと、お客様の心に響く表現は難しいでしょう。バカバカしいなんて思わず、自分の感動の沸点を下げて、素人の視点で商品に触れてみてください。忘れていた感動を思い出したり、新たな発見があるかもしれません。

 

感じた事にフォーカスして、お客さまにもその感動を共有してもらう。商品の魅力を伝える際に、大変有効な手段です。

 

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